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かつてのルーブル宮の構造は少し複雑
さて、いよいよルーブルの日となった。一日中が自由行動の日となった5日目である。
本来は絵画のことだけを述べればいいのかもしれないが、自由行動ということでアクセスにも苦労をし、かつバタバタと色々な経験をした一日でもあった。詳しくは個人のブログに譲りたいが、一つだけ挙げておくと、入場切符の買い方に戸惑ったことは忘れがたい。
例のピラミッドからそのまま入るのは混雑するとも聞いていたので、私と一緒に行ったMさん母娘は地下に通じる入口から入った。すると、ルーブルに通ずる階段上に切符の自動販売機がある。案内はもちろん、仏語と英語なのだけれど、Mさん(娘さん)が表示に従って操作しているうちにポンと音がし切符が買えたようだった。しかし、私の方は失敗。どうも暗証番号が必要なようだ。私は再度トライしようと思い、Mさんに操作の手順を聞きながら、カードを入れた。すると、何もしないままに「Approved」との文字が出て、切符が出てきたではないか。暗証番号なんか押していないよぉ〜。
Mさん曰く「ゴールドカードの威力ですかね?」と、何とも合点がいかなさそうな困惑の表情。確かに私のカードはゴールドだった。実に面白い体験でした(ハハ)。
さて、本題に入ろう。午前9時の開場からほどなく、中にはスンナリと入れた。Mさんたちとは別れて「昼過ぎにまたここらで会おう」ということになる。一人になった私が、他の多くの人につられるように階段を上ったのはドゥノン館であった。
ルーブルは天下の大美術館ということになるが、その建物は元宮殿だけに巨大だし構造も少し複雑である。簡単にいうと、中庭を中心に周囲を取り囲む建物が3つの“翼”を構成する形になっている。もちろん、それぞれは廊下でつながり移動できるようになっているが、初めての人はちょっと戸惑うだろう。私が最初に入ったドゥノン翼はセーヌ川に沿った建物ということになる。
結論的にいうと、このドゥノン翼からスタートし、フランス絵画の大作が多数展示されているシェリー翼、オランダ・フランドル絵画のあるシュリュー翼を実に効率よく回ることができた。お目当てであるオランダとフランスについては、それぞれ2度観て回ったことになる。1回目は午前で、2回目はMさん母娘を案内して午後に回った。
作品の数は膨大であるし、私も必ずしもすべての主要な作品を観ているとは考えられないので、自分の目に触れた“強い印象”を放った名作についてだけ触れることにしよう。
モナ・リザの妖艶さは本物で納得した?
ドゥノン翼に向かうときに「人が多いな」と思った。平日の水曜日。しかし、後でこれがみな、『モナ・リザ』(1503−06年)とミロのビーナスをお目当てにした人たちの列であったことを知った。私はたまたまその中にいたわけだ。
『モナ・リザ』はドゥノン翼の2階、イタリア絵画が並ぶグランド・ギャラリーの中間ぐらいから右に折れた別室めいた場所にある。やはりここだけは別格でガラスケースに入ったそれは、周囲にもちょっとした柵があるような状態で展示されている。人が多くてとても近寄れる雰囲気ではなかった。しかし、遠目にもその妖艶なほほえみは、やはり魔力なような魅力を投げかけてくる。天下の名品であることを、しばし納得した一時だった。
ただ一方、この展示室の前の廊下にはそれこそイタリア絵画の名作が「これでもか!」という雰囲気で無造作に並べられている。レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』などの有名な作品も本当にさりげなく飾られているのにはビックリした。見過ごす人もけっこういるのではないだろうか。この辺りで印象深いのはダ・メッシーナの『円柱に縛りつけられたキリスト』、ヴェロネーゼ『カナの婚宴』など。
前述の特別展示室(モナ・リザ)を抜けると、そこにはフランス絵画の大作が飾られた大広間が広がる。有名なのはジェリコー『メデューズ号の筏』(1819年)、ダヴィッドの『ナポレオン一世の戴冠式』、『サビーの女たちの略奪』などだろう。
お目当てはフェルメールとラ・トゥールです
しばらくイタリア絵画の展示を観たあと(やはり宗教画が多いので、その真価をすぐに理解できるわけではない)、お目当てであるフランス、オランダ絵画を探した。たまたまツアーで一緒だった若い女性2人に出逢い、一緒に探しているうちに隣りのシュリー翼にたどり着いたものだった。
見学の順路に沿ってみていくと、フランス絵画の回廊に入って間もなく28番の部屋がジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥールの部屋である。正面にいきなり有名な『いかさま師』(1635‐38年頃)が現れる。私も予想をしていなかったが、作品数は多く、『大工の聖ヨセフ』を始め、7、8点の作品が続けて並べられていたのではなかろうか。『蚤とり女』もここにあると聞いていたが、これは貸し出し中のようだった。それにしてもすごいコレクションだ。さすがにフランスが生んだ天才画家の“在り場所”というところだろうか。
続けていくとヴァトーの『ピエロ』や『ラ・フィネット』、フラゴナールの『チボリの滝』、コローの名品の数々やアングルの有名な『トルコの浴場』などが次から次へと現れてくる。さすがルーブル、フランス絵画への思い入れは尋常ではないのだろう。有名な『アルカディアの牧人たち』(プッサー)は探したけれど見つからなかった。
好きこそものの上手なれ、とは言うけれど今回もやはり一番の収穫、そして満足への結節点はオランダ・フランドル絵画であった。フェルメールの2作『レースを編む女』、『天文学師』(1668年)は言うまでもないだろう。飽きることなく眺めていましたな。『レースを編む女』は予想の通りの小品であったが、思ったほどは小さくなかった。『天文学師』の前では午前中は模写を行っている人がいたが、午後に訪れたときにはもうその姿を見ることはなかった。
フェルメールのことはまた触れる機会があるのではと思う。今回の収穫は、それ以外ではA・デューラーの『デューラーの自画像』の素晴らしさに魅せられたこと。レンブラントの『パテシバの水浴』はなかったけれど、その他の作品は堪能した。クラナッハの『少女の肖像』も捨て難いし、メムリンクの『エジプト逃避途上の聖家族』はベルギーでこの人の絵に魅せられたことを思い出させてくれた。フランス・ハルスの名品にもいくつも出遭い感激。この作家の肖像画にも、何ともいえない魅力があるのである。
そう。ちょっとした行き違いでスペイン絵画は見逃してしまったが、短い時間の中では十分な鑑賞行ができたと思う。ルーブルはやはり、私に何物かを与えてくれたと思える今回の旅――想像はしていたものだが、食わず嫌いの部分もあったこのビッグネームは、その響きの通り“偉大な”美術館であることは間違いないようだ。
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