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いきなり名作目白押しの驚異
ツアー行程の4日目。いよいよこの日から、私の目的とする美術鑑賞が始まった。かつて案内したように、ツアーの目的は世界遺産のいくつかと美術館めぐりなので、既定の鑑賞コースとしてオルセー美術館とマルモッタンは予め組み込まれていた。それはそれで非常にうれしいことであるものの、やはり私の主目的はルーブルのフェルメールとラ・トゥールなので、オルセーに関しては純粋な感想と印象に残った作品の重点的紹介にとどめたい。
オルセーは大変に人気のある美術館なので並んでいるヒトもいるようだったが、私たちは団体客のためかスンナリと入れた。ガイドの女性の説明を聞きながら(人数が多かったので、ここで2班に分かれた)、1階部分から見て回る。
すぐに目に付く名作として有名なのはアングルの『泉』や、ミレーの諸作品だろう。私の思い違いかもしれないが、『泉』は入口のすぐ脇にあると聞いていたものの目にしていない。ミレーの『晩鐘』も貸し出し中でなかったですな。その代わりに『落穂拾い』や『春』が、この日本人好みの画家の独特のタッチを醸し出していた。
1階で印象付けられたのはやはり、マネの『オランピア』(1863年)とクールベの『オルナンの埋葬』(1849年)、同じく『画家のアトリエ』(1855年)といった作品だろう。大きな絵だということは聞いていたが、特にクールベの2作は大きい。その迫力もさることながら、私はクールベという画家がたいへんに好きなので、しばらく見惚れるといった雰囲気だった。
ガイドの方が一番良く、そしてていねいに説明してくれたのは、マネの『オランピア』である。これも大変に有名な作品で知らない人はいないと思う。そして、各人の評価も微妙に分かれてくるのではないだろうか。ベッドに横たわる裸婦というのは古くからあるモチーフである。しかし、同じマネの『草上の昼食』(1862−63年)と同様に、この絵は発表当時は散々に酷評されたことでも有名だ。女性が娼婦と知れることが最大の理由であったという。私はマネはモネよりもはるかに好きな画家なのだけれど、『オランピア』以下の2作はあまり好きではありませんな。ただ、裸婦がモチーフになっていることが理由ではないのでお忘れなく。
「印象派の殿堂」はその名に恥じず
さて、最上層をなる3階部分に上がってみよう。ここへは、一番奥にあるエレベーターやエスカレーターを使って上っていける。よく、美術の案内書などには「ここが印象派の宝庫。入ってすぐに最上階に駆け上った方がいい」などと書かれている場所だ。
そう。ここはそうした説明もむべなるかな、と思わせるまさに印象派、ポスト印象派の名作がキラ星のごとく並んでいる“宝島”のような一画である。今さらになるが、オルセーは原則1848年〜1914年の絵画やその他の芸術作品を扱っている。その意味でかつてルーブルやその他の公立美術館にあった印象派の名品は、ほぼここに集められているといっていい。
マネ、モネ、ルノアール、ゴッホ、セザンヌ、ロートレック、ルソー……などなど。
作品は誰もが知っているものばかりなので、ここでは自分の印象に残った作品、実物を観ることで「本当にいいものだなぁ」と感激を新たにしたものだけを掲げておくことにしたい。これは本当の最低限ということです。
マネの作品は、『草上の昼食』はもちろんいいのだけれど、個人的には『バルコニー』や『エミール・ゾラの肖像』が好きである。続いてモネももちろんたくさんあるけれど、『日傘をさす婦人』はファンが多いし、私も好きな作品。しかし、いつもは2つ並んでいるハズの構図の違う2作は、一点が日本の国立新美術館に貸し出されていて存在しなかった。やはり、2つ並んでいるとそれなりに感激もあるのに違いないのだが……。
ゴッホの作品も多い。有名なのは『ガシェ医師の肖像』(1890年)だろうが、私が惹かれたのは『オーヴェールの教会』(1890年)、そして『自画像』(1889年)ということになる。『アルルのゴッホの寝室』もここにあるのだが、日本のオルセー美術館展に来たときにはかなり強烈な印象のあったものが、当地に来るとそうでもない。ゴッホだけでもかなりの作品(有名作)があることがその理由と思える。
ルソーの『蛇使いの女』に触れいたく感激
ここですべての作品を挙げるわけにはいかないのだが、自分が興味を持ち好きな作品としてドガの『アプサント』(1876年)と『アイロンをかける女たち』を提示しておきたい。ドガは彫刻も有名なので踊り子の絵ばかりが注目されるが、もう少し違った角度からの女性像のようなものが好きである。前記2作は、やはりその独特の女性の表情・しぐさに魅力があると感じる。
登場が遅ればせとなったルノアールは、何といっても圧巻は『ムーラン・ドラ・ギャレット』(1876年)の迫力だろう。かなり大きな作品だし、日本で『舟遊びの昼食』(フィリップス・コレクション)を観たときと同様の迫力を感じる。『田舎のダンス』と『都会のダンス』の並掲も面白い。この作家の名作も挙げればきりがないのだが、『ピアノに寄る娘たち』や『ぶらんこ』(1876年)ももちろん、大変な傑作だと思いますよ。
最後に一人、異色の画家ながら私が最も好きな作家のうちの一人が、知る人ぞ知るアンリ・ルソー(1844−1910)だ。税関吏(正式には違うともいう)として働きながら40近くになって絵を描き出したこの人の表現には、独特の魅力がある。色使いとその幻想的な雰囲気が心持ちを落ち着かせてくれるのだ。
大作『蛇使いの女』((1907年)をまじまじと飽かずに鑑賞できて、本当に良かった。この作品は、その暗い色調にもかかわらず、非常に華やかできらびやかな雰囲気を感ずるのはなぜだろうか。
感激したマルモッタンの建物とその雰囲気
紙幅の関係で余り長くは書けないのだが、同じ日の午後に訪れた、パリ郊外のマルモッタン美術館の印象を述べておこう。
正式の名称がマルモッタン・モネ美術館と呼ばれるように、ここは例の印象派の由来となった『印象・日の出』が飾られている館。世界でも有数のモネ・コレクションで知られる場所だが、残念ながら私は個人的にはこの人にはさほどの興味を感じてはいない。
一方で、この建物の落ち着いた外観と品格のある雰囲気に深く感銘を受けたながら、最近興味を持ち出したベルト・モリゾの作品が多数収蔵されていることに驚いた。どれも「いい絵だな」と思った。その際に覚えたタイトルではないのだが、二人の少女が描かれた『桜の木』が印象的。モネの部屋には、オランジェリー美術館と同様に、一連の睡蓮の作品が展示されているが、晩年の作品が多いのだと聞いた。私には、この連作の真価がどうも分からないようである……。
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