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期待はずれだったモン・サン・ミッシェル
読者には直接関係のないことかもしれないが、今回のツアーの性格と簡単な内容を紹介しておこう。その方が、私の目的の全体像をつかんでもらえるような気がするからである。
申し込んだツアーは、以前行ったヨーロッパ行と全く同じ。H交通社の格安パック旅行である。旅行社も私の興味と目的はよく知っていて、世界遺産や美術鑑賞を主目的としたツアーの案内はよぉ〜くしてくれる。今回もそうしたうちに一つだった。一方、一緒に同道した方たちは、07年春に東京都美術館で行われた「オルセー美術館展」を観に行き、そこで今回のツアー案内をもらったという人がけっこう多かった印象だった。
2007年6月2日出発のちょうど一週間の旅である。景勝地観光は、前半のジベルニー、モン・サン・ミッシェルなどごく少なく、眼目になっているのが4日目のオルセー美術館とマルモッタン美術館、5日目からの1日半ほどの自由行動という内容だった。丸1日以上の自由時間があるので、目的とするルーブル美術館も「ゆっくりと観られるのではないか」と考えたことが、今回の決心の一番の動機付けとなった理由である。
さて一方で、世界遺産の旅と銘打たれている部分もあって、コースの中にノートルダム大聖堂やモン・サン・ミッシェルという文化遺産が組み込まれている。詳しい感想は後で触れるとことになるけれど、私の目的はあくまで絵画だったので、フランスという国や事物について必死の探究心を持っていたわけではない。事実、少しく失望する部分もあったし、逆に「こんなにイイところがあるのか」と思わぬ発見をしたと感じた場面もあった。総じて文化の香りは楽しんだし、やはりフランスは国土も広大で美しい国であることは、本当に「そうだな」と思えたところだった。
期待はずれだったモン・サン・ミッシェル
必ずしも時間軸に沿った説明にならなくなってしまう。そこは勘弁してもらいたいが、憧れのモン・サン・ミッシェルを訪ねたのは3日目の6月4日であった。近くにあるサン・マロという港町に前日泊まり(ここはいわゆる城壁都市で雰囲気のあるいい所だった。宿泊のためだけの滞在だったことが悔やまれる)、そこから観光バスで訪れたもの。私は個人的に以前から「フランスならここだけは行ってみたい」と思っていたので期待感が大きかったものの、現実は期待に応えるだけのものにならなかったようだ。
この中世の要塞型修道院に入る直前に、同行したSさんから聞いた言葉。「まぁ、江ノ島みたいなものと思えばいいんじゃないかな。実際、門をくぐってすぐは売店ばかりだし……」。これはその後、「なるほどな」と思えたなかなか見事な例えであり、印象深かった。
私は基本的に海を素足で渡って訪れる場所だとばかり思っていたが、今は修道院のある場所まで土手が築かれていて大型バスがひっきりなしに訪れている(ただ、潮目が変わってしまったので、土手はまた壊す予定だそうだ)。門から中に入ると、そこはまさに江ノ島。
観光客相手の売店や食堂、軽食のスタンドなどが軒を連ねており、荘厳というよりはむしろ騒がしい観光地である。緩い坂道がだんだん険しくなる様も、なるほど「江ノ島に似ているな」と思い起こしたところだ。
修道院の建物自体はゴチック、ロマネスク様式の織り交ぜられたもので、それなりの趣は感じられた。教会部の最上部分には身廊と呼ばれる回廊様式の庭があり、列柱がぐるりと周囲を取り巻いている様はなかなか絵になる場所だと感じられた。しかし、他の建築部分は自分の期待ほどの感慨は残念ながら与えてくれなかった。
感じの良い港町・オンフルール
話は前後するが、ツアー行程の一番最初に訪れたのは、2日目のジヴェルニーの庭であった。言わずと知れた「モネの家」のある場所である。
6月3日午前10時20分着。モネの好きな人にとってはやはり憧れの場所なのだろうが、私はモネの才能は認めていても絵自体はさほど好きではない。だから、さほどの感慨はなかったものの、季節は良かったのでないかな。暑いくらいの強烈な日差しを浴びながら、写真では見たことのある池の周りを散策。睡蓮の花もところどころに寂しげに咲いているのが見られて、それなりの風情を感じる場所だった。
それにしても、家の内部にある浮世絵のコレクションはすごかった。喜多川歌麿、歌川広重、葛飾北斎……と、保存状態もかなりいいし、私にとってはこちらの方がよほど興味深かった。
ツアーはその後ルーアンに向かい、ここでは有名なノートルダム大聖堂を見学。その足で宿泊地であるサン・マロに向かったものだ。午後7時30分ホテル着。もちろん周囲はまだ明るいし、一緒に行っていた人でこの町を良く知る人は「非常にいい町」と話していたので、食事のあと、添乗員のAさんらとともに町を見学に訪れた。町全体が城壁に囲まれた作りになっており、湾に沿った廊下が散歩道になっている。まさしく中世のお城の造作である。冷たい海風を浴びながらワイワイと歩いていると、その辺の小道の門からナイトとお姫様が飛び出してきそうな……そんなヨーロッパ中世のロマンを感じる場所だった。
くどくどと状況説明が長くなってしまったが、この後(翌日)のモン・サン・ミッシェルがあり、パリへの帰途に少しだけ立ち寄ったのはオンフルール(どこかで聞いたような響きだが)という港町だった。
ここは町全体の景観が美しいことが有名だそうで、事実、私もその小体の佇まいと落ち着いた雰囲気に魅了された。港に係留されたカラフルなヨットの群れ。すぐその前に軒を連ねるカフェテラス。港の外れの一角には、何と小さなメリーゴーランドがその姿をのぞかせていた。まさに“絵”になる風景を持つ港町であった。多くの芸術家がここを訪れ、愛したという案内や説明にも「そうだろうな」と頭を上下させるばかりだ。
午後5時5分、オンフルールを出発。明日はいよいよパリ美術館巡りである。
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